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- 2020.05.14
- 【施術レポート】サッカー選手の股関節痛に対する施術とトレーニング
鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)は一般的に見られるスポーツ障害の1つであるが、とりわけサッカー選手に発生することが多い。股関節周囲筋のオーバーユースによる炎症、柔軟性低下による動作機能不全、体幹のインナーマッスルの筋力低下が主な原因だと言われるが、疼痛部位は下腹部から内転筋近位部まで多様であり、原因となる筋が内転筋なのか腸腰筋なのか、または鼠径管や外腹斜筋腱膜などの軟部組織なのか鑑別するのは困難である。これまで数多くの研究がなされ、文献が記されてきたが、鼠径部の構造が解剖学的に難解であることもこの疾患の鑑別を困難にする要因である。安静により疼痛緩和しても再びスポーツ復帰すると痛みが出ることが多く、一度発生するとなかなか完治せず再発を繰り返しやすいのも特徴である。
当院は高校のサッカー部と提携していることもあり、スポーツ外傷で来院される患者が多く、そのため鼠径部痛症候群に遭遇する機会も比較的多い。当疾患の患者に対して実施する施術内容としては以下のものが主となる。
・大腿四頭筋、腸腰筋、ハムストリングス、臀部、下腿部、腰部、体幹部への電気または手技療法による筋スパズムの解消
・下肢、体幹のストレッチ指導(スタティック、バリスティック)
・ウォームアップ、クールダウンの指導
・体幹と下肢の協調運動の訓練
当院での施術の記録を俯瞰すると、当疾患を発症する患者の特徴としては、下肢の柔軟性に欠け、体幹と下肢の協調運動が苦手な傾向が往々にして見られる。特に、ハムストリングスの柔軟性不足により、キック動作時に体幹と股関節の屈曲が円滑にできず、股関節屈筋群に非合理的な負荷がかかっていると見られる。このような患者に、スクワット動作を指示するとやはり股関節の屈曲ができず膝が過度に前に出るか、腰椎が前屈してしまう傾向があるため容易に判別できる。
トレーニング時は筋力増強だけではなく、ハムストリングスの柔軟性を出しつつ、体幹と下肢が連動、協調して動けるような全身運動の訓練をしなくてはならない。ある程度柔軟性の向上があれば、フルスクワットやプライオメトリック動作を取り入れていくべきだと考える。